しろ。

あ、雪だ。
コートを着てきて正解だったなぁ。
雪は白くて、とっても素敵。
今日みたいな日を、ホワイトクリスマスって言うんだろうな。
でも、寒いのだけは勘弁して欲しいと思う。
暖かい雪ってのを想像してみて、一人で笑った。
それって、溶けないから服にひっつきそうだ。

寒い寒い毎日。
寒い寒いこの道。
それでもこの道を私が走れる理由は簡単。
彼が居るからだ。
この道をまっすぐ行って、二つ目の角を右に曲がれば。
ほら、いつも電柱に背中を預けて。
白い息を吐きながら、私を待っていてくれる。


ああ、彼女が来た。
今日も白いコートを着て、走っている。
その姿に、ああ、やっぱ可愛いって思ってしまう。
それでも、俺からは声をかけない。
なんか、俺から声をかけたりしたらさ。
いつも15分前から待ってるってことを、悟られそうで。
だって、さぁ。

ごめん、待たせちゃった?

なんて言われたら、

ううん、今来たとこ。

って答えちゃうじゃないか。


今来たとこって彼は言うけど。
じゃあその足元にたくさん落ちてるのは何さってね。
煙草の吸殻。彼の好きなメーカーのだ。

彼とは夏に付き合い始めて。
晴れた日には海へ行って遊んだ。
雨の日にはお互いの家へ行った。

─じゃあ。冬はどうするんだろう。


学校、遅れるぞ。

ぼーっとしてる彼女に声をかけた。
ついでにさりげなく手を繋ごうとして・・・・失敗。
情けないことこの上ない。
あーあ。いつもいつも、これだもんなぁ。

でも、今日はいつもと少し違う。
なんたって、今日はクリスマス。
用意周到な俺が、この大事な日を忘れるとでも─

ふいに。首が温かくなった。


手編み。これでも頑張ったんだからね。

そう言いながら、彼の首にマフラーをかけた。
やっぱり、真っ白は変だったかなぁ。
彼ってばさ、完全に固まっちゃったし。

・・・・駄目かな?


やられた。不意打ちだ。

振り向いた俺に、彼女はえ?って顔をした。
今のはキツイ。
大好きな彼女からマフラー。しかも手編み。
ショックを受けない男がどこにいるのかと問いたい。

駄目かなって?
駄目な訳があるはずが無い。

─無言で、彼女を抱き寄せた。


首に、ふいに冷たい感触。

ありがと。お返しだ。

うわぁ。銀のネックレス。
もうっ。不意打ちはどっちなんだか。

俺が先にあげようと思ったのになー。

なんてふてくされてる彼の横顔が、愛しくて。



─そっと、キスをしてみることにした。



まっしろな朝。

まっしろなコート。

まっしろなマフラーを身につけて。


まっしろな道を。

真っ赤になった二人が。

しろい吐息を吐きながら、歩いていた。






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