最初はなんの興味もなかった。

ただ友達に、「聞いてみろって」って言われてそのとおりにしただけ。

たった1枚のCD。

イヤホンの硬質を耳に感じつつ、冷めたツラで再生を押した。


衝撃、だった。


俺は立ち尽くした。


勧めた友達もビビっちまうぐらい、俺は衝撃を受けた。



すげぇ



ただただそればっか浮かんでいた。



そして、今。
たった一枚のCDに。たった一曲に出会った俺は──







「翔!!風見鶏翔(カザミドリ ショウ)!!」

聞き覚えのあるキンキンした怒声に俺はうっすら目を開いた。
薄暗い楽屋の汚い天井がまず目に入る。
ちょいと視線を横に投げると、呆れた表情の女がため息をついていた。
「・・・うぃ、ほのか」
「うぃ、じゃないよこのバカ!」
女─火上ほのか(ヒガミ ホノカ)─は真っ先に鉄拳制裁を下した。
ああ、哀れな少年は魔神の鉄槌によって倒れてしまうのであった・・・ちゃんちゃん。
「って、こら。また寝ようとすんな!」
「ぐっ、感づかれたか」
仕方ない、次は脚が飛んでくるかもしれん。
よっこらせと体を起こし、とりあえず寝起きの挨拶をしてみる。
「おはようマイハニー」
「ぶっ」
よしよし、これぐらいの反撃はしておかんとな。
一生尻にしかれるなんて、俺には耐えられないし。
椅子から立ち上がり、うーん、と伸びをする。
そう長い時間寝たつもりはないのだが、緊張はさっぱり取れてしまった。
隣の椅子に仲良さげに腰掛けてこっちを見てる二人にVサイン。
と、二人の顔が軽くひきつり、俺は肩に何かが置かれるのを感じた。
「しょーーーうーーー」
・・・そうひどいことをしたつもりはないのだが、堪忍袋の尾がすっぱり切れてしまったか。
ほのかの必殺技「滅殺粉砕拳」が今まさに繰り出されようとしているっ。
「ほのちゃん・・・」
おっと、ここで助け舟が現れた。
隣の椅子にいた二人のうちの一人、小柄な少女。
水城夕(ミズキ ユウ)だ。
「ユウは黙ってて!」
「あの・・・さっきから見られてるよ・・・?」
「へ・・・?」
ぼそぼそとした感じの夕の言葉にほのかは周囲を見渡した。
開始間際の楽屋に集った多くのバンドマン達が、さっとほのかから視線をそらした。
「うわー。ほのちゃんハズカシー」
黄色い声でほのかを指差し、高らかに笑ってやった。
ほのかは拳を握り、わなわなと震えている。
やべ。そろそろキレるなこりゃ・・・
と思った矢先に、第二の助け舟が現れた。
「仲がよろしいことで。で、あと10分で出番やで?」
手にしたスティックで時計を指して笑うこの男は、桜井雷次(サクライ ライジ)。
その言葉に、俺とほのかの顔が引きつった。
「げ!?やべ、チューニング(楽器の音を正しく合わせること)してねぇ」
「う・・・あたしもだ。ゆうちゃんチューナー(チューニングする道具)貸して!」
「はい・・・」
慌しくも俺とほのかは作業を開始した。

5分もしたころにはなんとか落ち着くことができた、と思ったとき。
「BOYS&GIRLSさーん、出番っすよぉ!」
ここでこのライブの主催者から声がかかった。ぎりぎりセーフだ。
雷次がよしっ、と立ち上がって、俺達の方を向いた。
「ほな行くで!」
「おう、せいぜいステージをあっためてやるか」
お気に入りのギターを担いで、俺も立ち上がれば。
「待ってましたぁ!行くよゆうちゃん!」
真紅に染まった上からシールを大量に貼ったギターを担いでほのかも立ち、
「うん・・・ごーごー」
対照的に真っ白のベースを抱えて夕も立ち上がった。



BOYS&GIRLS。
ボーカル:HONOKA
ギター:SYO
ベース:YOU
ドラム:RAIJI

で構成される、今インディーズ界でファン急増中のロックバンド。

もとい。


たった一枚のCDに。たった一曲に出会った俺は──


この場所に確かに、立っている。













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