The Cosmic Dreamer

「あぁ・・・退屈だ」

病室の中で愚痴る男がいた。
彼は、車を運転していて横からトラックが猛スピードで突っ込んできたおかげで病院行きになってしまった哀れな大人・・・
左腕が複雑骨折という重傷だったが、何とか回復に向かっているところで3日後にはもう退院できるらしい。

「・・・少し歩くか」

といって、ベットから下りて病室の外に出る。
その時


「きゃっ」
「のわっ」

誰かが俺のほうに倒れこんできた。
目を開けて見ると、倒れこんできたのはまだ若い少女だった。

「あたたた・・・」
「はう〜」

俺は、その子から抜け出して立ち上がった。
軽く服をはたいて、彼女のほうを見るとまだ転んだ状態のままだった。

「誰か・・・起こしてぇ〜」
「おいおい、立てないのかよ。勘弁してくれよ」

どっこらせっと、彼女を立たせると彼女はふらつきながらも立ち上がった。
だけど、すぐにでも倒れそうだ。だけど、そばにある壁を支えにしてなんとか立っている。

--足が不自由なのか・・・

俺はさっき立てないのかと言ってしまったことに後悔する。

「ちょっと、何やってんの!?」

なんか、目の前から誰も座っていない車椅子を押しながら言った女性がいた。
たぶん、この子の母親なんだろう。

「でも、ここまで自分で歩けたんだよ。えへへ・・・」
「えへへ、じゃないわよ。全く。足が使えなくなってるのに。早く車椅子に。」

そう言われると、その子は渋々、車椅子に座った。
そして、母親と思われる人から

「この子がご迷惑をおかけしました。」

と、俺に一言

俺は、「あ、ども」と軽くお辞儀をした。

そして、彼女は車椅子とともにこの場を去っていった。





退院してからも、気づいたときには病院に行っていた。
足が不自由な子のところにお見舞いに一週間に一度、お見舞いに行っている。
気づいたときには半年が経っていた。
その間に、彼女とも打ち解けていった。

彼女の夢はなんでも「自分の足で歩けるようになりたい」とのことだ。
自分の足で歩いて旅をしたいと言っていた。
俺は「その夢は叶うよ」と励ましてあげた。

でもある日、彼女は聞いてきた

「ねぇ、天国ってどんなところかなぁ?」

意外なことを聞かれ、俺はすこしばかり動揺した。

「天国なんて本でしか読んだことがないし、見てみたいと思わない?」
「ん〜、そうだな・・・」

俺は考えてみた。でも、仏を見るのはまだ先の話だしあまり本気に考えなかった。

「俺は、あんまり考えたくないねぇ。先の話だしね」
「ははは・・・君らしいね。」

この日も、笑いながら終わるのかと思ったが彼女の一言でそれは崩れ去った。

「でも、私は、君より先に天国に行くことになるかもしれない」

彼女はさっきとはまるで違う雰囲気で言った。
俺は、何もいえなかった。その中で言葉を続けていく。

「私ね・・・あと3日で死んじゃうってお医者さんに言われたんだ。聞かされた時には、もう泣いてたよ。もう自分は死ぬのかと思うと今でも悲しいよ」

俺はショックだった。こんな罪もない子があと3日で死ぬなんて・・・

「だから、私の夢も叶わないよ。自分で歩くことも。旅をすることも・・・」

彼女は泣いていた。自分の夢が叶わないと知ったとき、どれだけ悲しんだことだろうか・・・

そして、俺は思った

--この子の夢を叶えてあげようと・・・





--君より先に天国に行くことになるかもしれない・・・

歩いてるときもこの言葉が俺の頭から離れなかった。

何か、俺にでもできるようなことは無いのか・・・

歩きながら考えていた。彼女の夢を叶えるために考えた。
しかし、何も思い浮かばない。
男は寝る間も惜しんで考えた。

ただ、無情にも刻々と時は迫ってくる。
そして、夜はふけていった・・・




俺は、夢を見ていた。

彼女といろいろなところを巡っては互いに笑いあっていた。
でも、その笑顔が遠ざかっていく・・・

「うぁぁぁぁ!」
そこで、跳ね起きた。

・・・夢か
そう思いつつ時計を見たら

「もう、昼過ぎか・・・」

時計の針は3時を指していた。

「よっぽど疲れてたんだな」

いろいろな思いが交差する中、俺は着替えて病院へ向かった。

いつも通り、車で音楽を聴きながら病院へ向かう。
あることを実行するためだ・・・

--旅をすることが出来ないのなら気分だけでもっ・・・





「・・・お兄さん?」

病室のドアを開けると、彼女がちょっとびっくりした表情で迎えられる。
よぉ、と軽く挨拶を済ませると、CDプレーヤーを鞄から取り出す。

「CDプレーヤー?これで、どうするの?」

きょとんとした顔で彼女は問い掛ける

「昨日、旅ができないっていってただろ?だから、せめて気分だけでも味あわせてやりたいんだ。」
「えっ・・・」

彼女は驚いたような表情をしていた。

「だから、目を瞑って聴いててくれ、な?」
「う・・・うん」

彼女は心なしか嬉しそうな表情で答えてくれた。そして、言われる通りに目を瞑る。

「じゃぁ、かけるぞ」

と、一言言ってから再生ボタンを押す。
すると、当たり前のように音楽が流れる。
それは、とてもやさしい音で心の底から感じ取れるような曲だった。

俺は、彼女を見つめる。
彼女の中で、どんな世界が見えるのか?
どんな気持ちになるだろうか、を考えながら見ていた。
でも、彼女の表情はどこか悲しそうだった。
そして、曲が終わった。
彼女を見ると、泣いてるようだった。

「・・・どうかな?」

と、恐る恐る聞いて見る。

「うん、何か宇宙を旅している感じでよかったよ・・・」
「そう・・・」
「何ていう曲なの?」
「The Cosmic Dreamerって言うんだけど、気に入って貰えたんならいいや」

俺はホッ、と胸を撫で下ろした。
何とか、感じ取ってもらえたようだ。だけど・・・

「でも、悲しい話だよね。」
「え?」
「気分だけ満足させても、自分では何もできなかった。」
「・・・」

俺は、黙って彼女の言葉を聞くしかなかった。

「でも、ありがとう。私のために考えてくれたんだよね?嬉しいよ。」
「・・・そうか」

少なからず、彼女は満足そうだった。
それを見て俺は、とりあえず一息おいた。
だが、次の瞬間・・・

「うぅ・・・」
「!!どうした!?」
「く・・・苦しいよ・・・誰か・・・助けて・・・」

彼女は急に発作を起こしてしまったらしい。
俺は急いでベッドの近くにあるナースコールのボタンを押す。

「しっかりしろ!」

俺は、看護婦さんが来るまで彼女を励ましつづけた。

暫くして、看護婦さんと主治医の先生が病室に駆けつけてくれた。
主治医の先生は、この状況を見てかなり動揺していた。

「マズイな・・・」
「先生、この子はどうなるんですか!?」

俺は、焦った感じの声で先生に聞く
だが、先生の口から出た言葉はあまりにも残酷なものだった。

「今日が・・・最期かもしれん」
「!?」

俺は愕然とした。まさか、俺の目の前で彼女が死ぬことになるなんて

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

彼女は苦しそうに呼吸していた。それが何時間にもわたって
だが、苦しそうに

「せん・・・せい・・・お兄さんと・・2人だけ・・・にして・・・くだ・・さい」
苦しそうな声で先生に言う
そうすると、主治医の先生と看護婦さんは無言で病室から去っていく

「・・・何だ?」

2人だけになった病室に俺の声が響く
もう、その頃にはあたりは暗くなっていて、月も出ていた。

「さっきの・・・曲・・もう一回だけ・・流してくれるかな・・」

もう、彼女の体は衰弱しきっていた。
その中で、俺はCDプレーヤーの再生ボタンを押す。
すると、さっきと同じ曲が流れる。

「・・・」

彼女は目を瞑っていた。どうやら、さっきと同じようなことを目に浮かべているのかもしれない。
そう思いつつ、彼女を見守っていた。



そして、曲が終わる・・・



「虚しいね・・・聴いてる・・ときは・・賑・・やか・・なのに・・終わっ・・ちゃう・・・と悲しいね。」
彼女の眼には、うっすら涙が流れていた。

「でも・・・私って・・・もう、死んじゃう・・・んだよね・・・」

静かな病室の中で彼女は言葉を続けていく

「でも・・・私って・・一人じゃ・・・なかったん・・・だよね・・・お兄・・・さんがいて・・・くれ・・・たから・・・」
「・・・そうだな」

俺は軽く言い返してやる。

「あ・・・り・・・・が・・・・・・とう・・・」

この言葉を最後に彼女はいなくなった。
俺は彼女の頬に触れてみるが、もう温もりを感じることが出来なくなっていた・・・
月明かりだけが、静かな病室に光を差し込ませていた。

その時、俺は心から思った。

「The Cosmic Dreamer」

もしかすると、それは彼女のことだったのかもしれない・・・と





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