魔法使いジオノ

第一幕


地方都市、ミレニア。
この大陸に多々ある、自治都市のひとつだ。

ここの領主はふてぇ野郎でな。
自分の利益のために、重税を強いてやがる。
逃げ出したり払わなかった野郎は見せしめでオダブツさ。
男は殺っちまう、女はヤっちまう、ガキと老人はペットのえさ。ひでぇもんだ。

こんな街に、あの野郎は現れたって寸法だ。


はてさて、今回は何をやらかすのやら。








おかしな男だった。
顔立ちは整い、美しきこと限りなし。
背は高く、銀髪。ふちの太い眼鏡がまた似合っている。
ひどく疲れたこの街でも、あまりの美しさに振り返る人は後を絶たなかった。

もっとも、全ての人がすぐに目をそらすこととなる。

彼の手には細い麻のロープ。

んでもって、その先に繋がれてるのは


四つんばいのネコ耳の少女、である。



(おいおい、昼間っから変態かよ・・・・・)

(ネコ耳ふぇちなのかしら・・・・変態よねやっぱり)

(・・・・新手のSMプレイ?)



のっけから変態呼ばわりされまくるこの男こそ本編の主人公、ジオノである。


もちろんこんな状態で、かつ市長に権力が集中している街なのだ。
当然、警察官に呼び止められた。


のっけから変態扱いで捕まろうとしているこの男、しつこいようだが主人公である。


「おい、そこの変態!」
警棒を抜き、にやにや笑いを浮かべながら警察官の一人がジオノを指した。
警察官とは名ばかり、権力を傘に身勝手な振る舞いを許されている悪党どもである。

もっとも、この場合呼び止めるのは警察官としてかなり正しい行為だと思う。

変態呼ばわりされたジオノは呼び止めた警察官、その左右にいる2人の警察官を一瞥した。
そして、何事もなかったかのように歩き去ろうとした。
「待てこらぁ」
少し不機嫌そうな表情で、左にいた警察官がジオノの肩を強く押した。
その瞬間、


ぐきっ


鈍い音がしたと思うと、その警察官の肩がだらんと地へ向かって伸びた。
いつの間にかジオノの横にいるネコ耳少女。
どうやら彼女が警察官の肩を外したようだ。並みの腕力ではない。
「あ・・・・・ぎゃああああああ!!

いつの間にか出来ていたギャラリーからおおーっと歓声があがった。
「全く物騒な。ねぇ、キャロル」
ジオノは微笑を浮かべ、優雅にネコ耳少女─キャロルの前髪をかきあげた。
くすぐったそうにするキャロルの額には、真紅の十字架がくっきり刻まれていた。

「く、紅十字・・・・!」
「あいつ、魔法使いか!!」

歓声はどよめきに変わり、ジオノと対峙していた警察官の表情は青ざめた。
最初にジオノを呼び止めた男が、キャロルを指差しわなわな震えて言った。
「な・・・こいつは使い魔なのか!?」
「びんごー」

警察官の頭を掴み、ジオノは楽しそうに持ち上げた。
口の端を吊り上げ、親指を立てて静かに言い放った。



「萌えるだろ?ネコ耳」







「面会?私にか?」

いかにもって感じの巨大な部屋。
いかにもって感じの巨大な椅子にこしかけ、
いかにもって感じで若い女性だったものを床に投げ、市長は聞き返し た。

この土地を手に入れて早3年。
ごたごたを自らの力で抑え、ようやく安定してきたときに、突然の来訪者。
悪党の王道たる彼の胸中は、それほど理解に苦しくないだろう。

「いいだろう、会おう」
秘書にそう伝えると、退室した秘書にかわって二つの影が入ってきた。

肩にかかる程度の美しい銀髪をなびかせた長身の青年。
そして彼に後ろにつき従う、首輪で繋がれた四つんばいのネコ耳少女だった。


「・・・・変態?」


「失礼な人だなぁ、初対面なのに」
ジオノは怒っているかのような口ぶりで、天使のような笑みのまま言った。
彼が肩にかけた小さな鞄から辞書のようなものを取り出すのを見ると、市長の表情が凍りついた。
「貴様・・・・魔法使いか」
「うん、僕はジオノ。彼女は使い魔のキャロル」
自分と背後の少女を指し、実に簡単な自己紹介を始めたジオノ。
市長は眉を寄せていたが、ほどなく小さく笑いながら口を開いた。
「私はここの市長だ。少年、君は」

「うん、そんでその暗がりにいるワンちゃんが君の使い魔だね」

市長の言葉をさえぎり、ジオノは笑顔で言い放った。
市長は作り笑いのまま凍りついた。
すぐにジオノが指差した方向から、大きな影がのっそりと現れた。

巨大な3つ首の犬だった。
さきほどの女性だったものを口にくわえ、そのよだれは止まることを知らないようだった。

「さあ使い魔を見せてあげたよ。君の目的は何かな?」
勝ち誇った笑みで問う市長。
ジオノはやはり笑顔のままで、小さく頷き言った。


「僕は魔法使いの頂点になりたいんだ。というわけで、僕の部下になってくれないか」


冗談のような口ぶりだったが、その眼鏡ごしの瞳には一点の曇りも感じない。
市長はぽかんと口を空けていたが、すぐに凄惨な笑みへと変貌した。
「よかろう、君が今後生きていればの話だがな!!」

同時に、3つ首の犬がジオノへと襲い掛かった。
と思った瞬間、猛犬はキャロルに押さえつけられていた。
右の首がキャロルの喉に噛み付こうとする。
キャロルは強烈な左アッパーでその顎を軽々と粉砕した。
悲鳴をあげる猛犬。その間に左の首がキャロルの足へと噛み付いた。
宙へと飛び上がり、両足で猛犬の首を固定して素早い倒立前転のような動きでその首はへし折られた。
が、その動きでスキが生じた。
残る中央の首が、キャロルを噛み砕こうとその顔をほおばった。
なんとか両手(前足?)でその顎を固定するキャロル。

一瞬で二つの首が倒されたことに唖然としていた市長だが、有利と見ると高らかに笑い出した。
「ふははははっ!ジオノ君とやら、こんなものかね?」

「いやいやいやいや」

その言葉に、使い魔たちから目を離しジオノの方へ向き直る市長。
ジオノは瞳を閉じ、微笑を浮かべたまま両手を突き合わせていた。
片膝をつき、まるで祈るような姿。
その姿を見た市長は、怪訝な表情を浮かべた。
「命乞いかね?」
「分かってないなぁ。僕らビーストマスターじゃないんだ、魔法使いな んだよ?」


魔法?


悪魔のような使い魔を作り出し使役する。


それが魔法使いの魔法ではないのか?


ジオノは皮肉っぽい笑みをまた浮かべた。
しかし、よく笑う男である。

「君のような男がいるから僕が変態扱いされるんだ。
(↑断じて違うと言っておこう)

さあ聞け、僕の魔法の言葉を。


It's the time of the oath
(今こそ宣誓の時)
The time of the oath
(今こそ宣誓の時)
My sweetest memories
(僕の中の甘美な想い出は)
Die in the cold
(寒さの中で死ぬ)
It's the time of the oath
(今こそ宣誓の時)


空気が凍りついた。
3つ首の猛犬も凍りついた。
市長も凍りついた。
体の奥底から寒気が襲ってくる。
体の毛一本一本が凍りつくような寒さである。

寒いのに汗をかいている。
水分が自らの頭上にたまっていく。
それはいつしか、槍の形をしていた。

ジオノは彼らに手を振った。
さきほどと同じ笑顔で、笑った。

「ばいばい。道化の神ハロウィンの名において、裁きを。the time of the oath





凍りついた水分の槍は、重力に静かに従った。



「君から萌えも美も感じない。ゴミ以下だね」



これが市長の最後に聞いた言葉となった。







かくして、この都市は圧制から救われることが出来た。

しかし、前市長のダイイングメッセージの謎はいつまでも解けなかった。



萌え」だけじゃ、そりゃなぁ。




終わり




いいんかこれで。

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析